豊かなコミュニケーションや多様な体験が可能なオンライン空間として注目されている「メタバース」。名前はよく耳にするけど、実は詳しく知らない方も多いかもしれません。今回は、その「メタバース」についてご紹介します。
もくじ
◆メタバースとは
メタバースという言葉は、「Meta(メタ)」=「仮想」や「超越」、そして「Universe(ユニバース)」=「世界」や「宇宙」を組み合わせたもので、仮想空間や仮想世界を意味します。
一般的に、メタバースは「インターネット上で自分のアバターを使って活動できる仮想空間」として理解されています。SNSの未来形ともいえるこの仮想空間は、サービス提供者や利用者の立場によって、その定義や範囲が異なる場合があります。
この用語は、もともと1992年に発表されたニール・スティーブンソンの小説『スノウクラッシュ』に由来します。小説では、登場人物がコンピューターで生成された仮想世界で多くの時間を過ごす様子が描かれ、現代の私たちの在宅生活やリモートワークにも通じる部分があります。
COVID-19パンデミックの影響で、現実に近いオンライン交流のニーズが高まり、メタバースはゲームや音楽ライブなどを通じて広く普及しました。今後も、豊かなコミュニケーションと多様な体験が可能な空間として、さらなる発展が期待されています。
◆メタバースの種類
「メタバース」は、よくVRゲームと関連付けられますが、実際にはその範囲ははるかに広がっています。最近では、ヘルスケア、教育、医療、流通など、多様な分野での利用が期待されています。
そこで、メタバースを大きく5つのカテゴリーに分けて詳しく解説していきます。
1. VR
VRは「バーチャル・リアリティ(Virtual Reality)」の略で、「仮想現実」とも呼ばれます。VRの特徴は、実際の現実とは異なる仮想空間を、まるで現実であるかのように体験できる点です。視覚だけでなく、嗅覚、触覚、聴覚、味覚といった五感に訴えることで、より強い没入感を得られることが特徴です。
最近では、教育の現場でもVRが積極的に活用されています。例えば、津波の仕組みをリアルに学ぶために使われたり、世界史の授業で異国の文化を臨場感たっぷりに体験したりすることで、学習内容をより深く理解する手助けをしています。
2. AR
ARは「Augmented Reality(オーグメンテッド・リアリティー)」の略で、日本語では「拡張現実」と訳されます。ARの特徴は、現実の世界にデジタル情報を重ねて表示することです。
たとえば、「日経AR」というアプリを使うと、新聞の記事にスマホをかざすだけで、自動車の部品が立体的に浮かび上がるような体験ができます。これは、現実の紙面にデジタル情報を加えて、新たな視覚体験を提供する技術の一例です。
3. MR
MRは「Mixed Reality(ミクスト・リアリティ)」の略で、日本語では「複合現実」と訳されます。Microsoftのホロレンズに代表されるように、現実の世界に仮想の映像や情報を重ねて、まるでそこに実際に存在するかのように見せる技術です。
ARと似ていますが、MRは仮想のオブジェクトに直接触れて操作できる点が異なります。ARでは、仮想のものをデバイス越しに見るだけで、触れることはできません。一方、MRでは、自分の手で仮想のものを動かしたり、操作したりすることが可能です。
4. DR
DRは「Diminished Reality(ディミニッシュド・リアリティ)」の略で、日本語では「減損現実」と呼ばれます。この技術は、現実世界に存在するものを見えなくすることで、AR(拡張現実)の反対の概念といえます。
DRは、身近な画像加工アプリで活用されています。また、ARと組み合わせることで、さらに便利なサービスが実現できます。例えば、新しい家具を買う際に、部屋の写真を撮り、DRで既存の家具を消してからARで新しい家具を表示すれば、その家具が部屋に合うかどうか簡単に確認できます。
5. SR
SRは「Substitutional Reality(サブスティテューショナル・リアリティ)」の略で、日本語では「代替現実」と訳されます。この技術は、過去の実際の映像や音声を仮想空間に取り込むことで、その仮想空間が現実であるかのように錯覚させるものです。
SRはまだ新しい技術で、実用化された例はほとんどありません。しかし、例えば、トラウマ治療において、患者がトラウマを引き起こした出来事を仮想空間で再体験し、克服するために使われる可能性があります。ただし、対象者にその体験を現実と錯覚させる必要があるため、実用化にはまだ課題が残っています。それでも、SRは将来性のある技術として注目されています。
◆メタバースの特徴
前のセクションで紹介した5つのポイントには共通する特徴があります。それは、ユーザーが自由に世界を探検し、要素を変更できる「オープンワールド性」、自分のアイデアを基に独自のゲームや空間を作り出せる「サンドボックス性」、そしてユーザー自身がコンテンツを作り、共有できる「クリエイター・エコノミー性」です。
これらの特徴のおかげで、私たちはメタバース内でコンサートを楽しんだり、アイテムを取引したり、ビジネスに活用したりすることが可能になっています。
2018年に公開されたスティーブン・スピルバーグのSF映画「レディ・プレイヤー1(Ready Player One)」では、メタバースの概念や仮想世界での消費活動、そしてメタバースと現実世界とのつながりが描かれていました。この映画が示す未来が、今まさに現実になろうとしています。
◆まとめ
Meta(旧Facebook)をはじめ、Google、Microsoft、Apple、Samsungといった世界的な企業が「メタバース」に注目しています。その理由は、メタバースが消費活動に大きな変革をもたらすと、多くのリーダーや経営者が信じているからです。
この動きは今後、さまざまな業界に広がると言われており、メタバースを事業戦略やマーケティングに取り入れる企業が増えています。今のうちにメタバース関連のスキルを身につけることで、希少な人材としてのチャンスが広がるでしょう。
メタバースでは、プログラミングやUI/UXデザイン、プロジェクトマネジメントなど、活かせるスキルがたくさんあります。これらのスキルを積極的に磨いていくことで、さらなる可能性が広がります。