今回は、IE(Industrial Engineering)についてご紹介します。IEは、業務を効率的に進めるために、作業や工程を最適化する技術です。その研究は100年以上前から行われており、現在ではトヨタやサイゼリヤなど、多くの企業が生産性を高めるために活用しています。
もくじ
◆IE(Industrial Engineering)とは
IE(インダストリアルエンジニアリング)は、生産工学や管理工学を指す概念であり、作業工程を科学的に分析し、効率化や合理化を目指す手法です。完全に一致する日本語訳は存在せず、一般的に「IE」と略称で呼ばれています。主に現場作業で活用されますが、事務作業にも応用可能で、コスト削減や生産性向上に大きく貢献します。
◆作業におけるムリ・ムダ・ムラ「3M」とは
「3M」は業界や業種によって異なる意味を持つ場合がありますが、生産現場での3Mは「ムリ」「ムダ」「ムラ」を指します。これは、生産性向上を目指す上で重要な考え方です。
IE(インダストリアル・エンジニアリング)の目的
簡単に言うと、IEの目的はこの「ムリ・ムダ・ムラ」を取り除き、業務を効率化することにあります。それぞれの3Mの具体的な定義は以下の通りです。
- ムリ:能力以上の負荷がかかっている状態を指します。例えば、余裕のないスケジュールや過剰な仕事量などがこれに当たります。
- ムダ: 能力に対して負荷が少なすぎる状態を指します。使われていないリソースがある場合など、「宝の持ち腐れ」とも言える状況です。
- ムラ:ムリとムダの両方が同時に発生している状態です。負荷が一定でなく、不均衡が生じることを指します。
3Mが引き起こす問題
3Mが存在すると、余分な生産や余計な手間が発生し、人員不足や人員過剰といった問題を招きます。これにより、効率的な運営が妨げられ、結果的に生産性の低下を招く可能性があります。
IEの役割
IEは、この3Mが作業のどこに存在するのかを徹底的に分析します。そして、問題を解決することで、作業の効率化と生産性向上につなげる手法です。このように、IEは現場の改善活動において欠かせない考え方です。
◆IEの分析手法と活用ポイント
IE(Industrial Engineering)の作業研究は、主に「方法研究」と「作業測定」の2つから構成されています。これらは、工程や作業を分析し、効率化を図るために欠かせない手法です。また、IEを活用する際には、分析の客観性と定量性を確保することが重要なポイントとなります。
IEの分析手法
1.方法研究
工程、方法、動作を細かく分析し、改善する手法です。以下の例があります。
- 工程分析:材料から製品までの一連の流れを分析して改善
- 動作研究:作業者の動作を分析し、最適な動作を見つける
2. 作業測定
作業時間や効率を客観的に数値化し、標準時間を設定して非効率な作業を除外する手法です。以下の例があります。
- 時間研究:作業時間を計測して効率を評価
- 稼働分析:設備や作業者の稼働率を把握
これら2つの手法は、個別に使用するだけでは十分ではありません。両者を組み合わせて分析を進めることで、より効果的な改善策を導き出せます。
IE活用のための注意点
IE手法を活用する際は、以下の点に注意する必要があります。
- 客観的かつ定量的な分析
感覚的な判断ではなく、誰が行っても同じ結論に至るよう、数値や数量で表現されたデータを基にする必要があります。 - 説得力のある結論の導出
定量的なデータを活用することで、改善提案の信頼性と説得力を高めることができます。
3. 分析の手順
- 基準の定量化(STEP1)
作業の指示を数値化し、測定器や変位計を使って実際の作業を数値で記録します。 - データの可視化(STEP2)
収集したデータをグラフや図表に整理することで、改善すべきポイントを分かりやすくします。 - 改善点の適用と再測定(STEP3)
分析で洗い出した改善点を適用し、再度データを収集します。このサイクルを繰り返し行うことで、より効果的な改善策を追求します。
これらの手法とプロセスを駆使することで、IEの目的である作業効率の向上や無駄の削減が実現します。特に、方法研究と作業測定をバランスよく組み合わせることで、分析の精度を高め、より実効性のある改善案を導き出すことが可能です。
◆まとめ
IE(インダストリアルエンジニアリング)は、作業工程を科学的に分析し、効率化と合理化を目指す手法です。「ムリ・ムダ・ムラ」を排除することで、コスト削減や生産性向上を実現します。方法研究と作業測定をバランスよく活用し、業務の改善にぜひ取り組んでみてください。IEは、効率化のための強力なツールとして、現場や事務作業のさまざまな課題解決に役立つでしょう。