今の時代、誰でも当たり前のように利用しているWeb技術ですが、HTMLやCSSなどのWeb技術は、すべてがルール化されているわけではありません。
自由度が高く、開発者に任されている部分も多い一方、「互換性がなく、新サービスに応用できない」「コンテンツの質がバラバラ」などといった問題も発生します。
このような問題を改善するために、Web標準化の活動が行われています。
今回はHTMLやCSSなど一定のルールを設け、互換性や品質の保持を推進するのが標準化団体である「W3C」の役割、そして勧告プロセスについてご紹介します。もくじ
◆W3Cとは
W3C(ダブリュースリーシー)とは、World Wide Web Consortiumの略称で、1994年に今日のインターネット技術の基礎を確立し無償公開した、ティム・バーナーズ=リーによって創設されました。
Webで使用される技術を標準化し、よりスムーズな開発や品質向上を目標に活動が続けられています。
現在はHTMLやXHTML、CSS、DOM(Document Object Model)やXML(Extensible Markup Language)など様々な仕様が公開されており、IT関連企業を中心に400近くの団体が会員として加入しており、W3Cは今や世界中に支部を設立するほど大規模な団体へと成長しています。
◆W3Cの役割
Google Chromeをはじめ、Internet Explorer、Firefox、Opera、Safariなどの代表的なWebブラウザは、開発元が異なるため、同じWebページでもブラウザによってレイアウトなどが変わってしまう問題を抱えています。
このようなコンテンツの品質のばらつきを防ぐために、W3CがHTML/CSS/JavaScriptなどの仕様書をまとめ、国際標準規格として公開しています。
Webブラウザやバージョンごとの互換性を保証することは、ユーザーの使いやすさや開発者の開発における負担を減らせるため、とても重要です。
このような互換性を保証するために開発者側が気をつけることとして、Web標準規格を準拠することが推奨されています。
◆W3C勧告とは
W3Cの重要な役割である仕様の標準化は、簡単に決まるわけではありません。
国際的な標準として利用するための審議に向け、さまざまなチームやグループの見解・支持が必要となります。
この審議・検討を「勧告プロセス」といいます。
そして仕様決定の最終段階が「W3C勧告」とされます。
最終的なW3C勧告に至るまでには具体的に4ステップの段階があります。
・作業草案
仕様の標準化における最初の段階で、「Working Draft」と呼ばれています。
まずはW3Cのワーキンググループが起草し、次にディレクターによる承認を受けると、W3Cメンバーや公的機関などのコミュニティなどに文書が公開され、レビューを受ける段階へと移っていきます。
・最終草案
草案がワークグループの規定や関連要求仕様を満たし、レビュー時に発生した疑問点などを明確に対応すると、最終草案(Last Call Working Draft)としてアナウンスされます。
・勧告候補
最終草案が要件を満たすと、ワーキンググループのディレクターが諮問委員会へ標準情報の実装可否に関する評価を依頼します。
文書は勧告候補(CR:Candidate Recommendation)へと進みます。
・勧告案
勧告案(PR: Proposed Recommendation)ではさらに厳しい条件の下、諮問委員会の審議・評価が行われます。
その期間は最低でも1ヶ月ほどとされており、実装に問題があると判断された場合には、作業草案や勧告候補のレベルへの差し戻されることもあります。
問題がなく順調に進めば仕様標準化の最終ステップである「W3C勧告」へと進み、W3Cが認める諮問委員会やチーム、ワーキンググループといった組織全体から十分な支持が得られたものとして、仕様・指針・要件から構成された文書がWeb標準として一般公開されます。
◆まとめ
Webの制作現場を支えるWeb標準は、W3Cで綿密な勧告プロセスを経ることで生み出されたWeb制作における共通の指針といえます。
W3Cの役割の理解が、よりお客さまを惹きつけるWebページを作成する事につながります。
W3CのWeb標準・仕様書は日本語化された内容も公開されていますので、一度目を通しておくといいでしょう。