ビッグデータとは、従来のデータベースでは処理が困難なほど膨大なデータのことを指します。このビッグデータを収集・分析することで、株価の予測や売上向上、コスト削減といったさまざまな課題解決に役立てることができます。また、企業ではビッグデータに加え、誰でも自由に利用できるオープンデータの活用も進んでいます。
こうしたビッグデータやオープンデータを効果的に分析・活用するには、専門的な知識を持つデータサイエンティストの存在が不可欠です。今回は、データサイエンティストがどのようにビッグデータやオープンデータの活用を支えているのか、その具体的な事例をご紹介します。
もくじ
◆急速に拡大するビッグデータ市場
IT技術の急速な進化により、IoTやAIといったシステムやサービスが多岐にわたる分野で活用されています。IoT技術を活用すれば、センサーや通信機能を通じてモノの状態や環境に関する情報をインターネット経由で伝送できます。このように膨大な情報を迅速に処理できるIoTは、データ収集に欠かせない存在となっています。
一方で、収集したデータを効率的かつ精度高く分析するためにはAIが必要不可欠です。AIを活用したビッグデータ分析により、作業の効率化が図られるだけでなく、サンプルデータの規模を拡大し、分析精度を向上させることが可能になります。
IoTとAIの普及により、データの収集・分析は多面的に進化し、取り扱えるデータの種類が多様化しました。その結果、膨大なデータの管理や迅速な処理が低コストで実現可能となり、ビッグデータ市場は急成長を遂げています。
IDC Japanの2021年の予測によると、国内のBDA(ビッグデータ解析)ソフトウェア市場は2025年までに6000億円規模に達し、2019年と比較して倍増する見込みです。
かつてはマーケティングが主な用途だったビッグデータですが、現在では医療、開発、言語処理といったさまざまな分野で活用されています。さらに、政府も個人情報を含むビッグデータの活用を検討しており、プライバシー保護に関する基準策定が進められています。
また、国や自治体は公共データをオープンデータとして一般公開しており、これらはインフラ事業や防災対策など、社会発展に寄与する分野で活用されています。このように、ビッグデータは社会に大きな変化をもたらし続けています。
◆データサイエンティストが求められる理由
ビッグデータとは、その名の通り膨大なデータの集合体です。しかし、これらを効果的に分析するためには専門的な知識やスキルが欠かせません。このようなデータ分析のプロフェッショナルが、データサイエンティストと呼ばれる存在です。現在、データサイエンティストは高い需要がある一方で、人材不足が課題となっています。
データサイエンティストの主な役割は「データを分析し、それを事業の成果に結びつけること」です。このため、統計学や数学、業界固有の知識、そして膨大なデータを効率的に扱うためのITスキルなど、幅広い能力が求められます。
データサイエンティストは将来性のある職業として注目を集めていますが、最初からその道を目指すのは難易度が高いため、まずは基礎となるITスキルの習得から始めることをお勧めします。データ処理に使用されるSQL、PHP、Javaなどを学ぶことで、マーケティングデータの収集や活用の仕組みを作るスキルが身につきます。最初はデータベース関連の技術を習得し、徐々にマーケティングデータの分析を行い、それを企業の意思決定に活かせる力を磨いていきましょう。
◆国内におけるビッグデータ活用の具体例
道路交通
東京ゲートブリッジでは、通過する車両の重量を算出し、そのデータを活用して過積載を監視しています。これにより、橋への負担を軽減し、事故の原因となる車両の走行を防ぐ取り組みが行われています。
航空機
ANAでは、旅客や荷物の重量などの搭載予定情報をリアルタイムで収集し、それに基づいて機内の搭載物を迅速に配置しています。この仕組みにより、運航の安全性を確保しつつ、燃費効率の向上を実現しています。
マーケティング
楽天では、顧客の購入履歴や行動データを分析し、顧客特性に合わせた広告を配信することで、サービス利用者の増加やクリック率、購買率の向上を達成しました。
翻訳ツール
DeepLは、10億人以上が利用しているとされる無料のオンライン翻訳ツールで、ビッグデータを活用しています。AIが膨大な翻訳データを学習することで、人間に匹敵する高精度な翻訳を実現しています。
◆まとめ
ビッグデータやオープンデータは、企業の意思決定において重要な役割を果たします。しかし、これらのデータを効果的に活用するためには、データサイエンティストのようなデータ活用の専門家が欠かせません。