近年、新技術や新サービス、商品の開発、及びプログラマーやWebデザイナーの育成の場として日本国内でも注目が高まっている「ハッカソン(Hackathon)」
エンジニア同士がフラットな立場で技術と経験をぶつけ合う「エンジニアの祭典」と呼ぶべきイベントです。
今回はその「ハッカソン」について詳しく説明していきます。もくじ
◆ハッカソンとは
「ハッカソン」とは、ハック(Hack)(コンピュータシステムへの侵入ではなく、プログラミングやシステム開発を意味しています)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語です。
エンジニア、デザイナー、プランナー、マーケターなど、Webデザインやシステム開発に携わる複数人がチームを作り、与えられたテーマに対して1日から1週間程でサービスやシステム、あるいは新しいアプリケーションを開発し、そのスキルやアイデアを競うイベントの一種のことを指します。好成績を収めたチームには、賞金が出される場合もあります。
チームでマラソンの様に行うのでハッカソンと言われています。
2000年前後あたりからアメリカのIT企業で盛んに行われるようになったこれらイベントの試みは、2010年前後から日本でも開催され始めたと言われています。
現在では大きな可能性を秘めたオープンイノベーション手法の1つとして知られ 、IT企業だけでなく自動車、電気、通信、メディア、自治体や教育機関など多くの企業がハッカソンを開催しています。
◆ハッカソンの目的は?
多くのIT企業がハッカソンを主催する目的は多々ありますが、新しいサービスや機能に関するアイデアやヒントを発掘できることが大きな目的としてあります。
業界内的に評価の高い技術を開発することに成功したものの、活用法やマネタイズの方法を見つけられず、高い技術を持て余してしまい、自社の成長に結びつかないまま…というケースも少なくありません。
そこで、APIを公開し、アプリケーションやWebサービスを開発してもらうためにハッカソンを開催するのです。
外部のエンジニアやデザイナーなどは、自社の文化とは全く異なるバックグラウンドを持つ人ばかりです。
そうしたハッカソン参加者の発想や開発方法を参考にすることで、自社で新開発したテクノロジーの活用法を見出せます。
賞金をつけてまで、コンテスト形式でハッカソンを開催する裏には、こうしたメリットがあります。
例えば、SNSで有名な「いいね!」機能も、もともとはハッカソンを通じて誕生したものだったと言われています。
また、参加するエンジニアにとっても大きなメリットがあります。
個人作業が多く、コミュニケーション能力を伸ばす機会に恵まれないエンジニアにとっては、一つの目的に向けて話し合い、役割分担を行い、進捗を確認しつつ、最終的に一つの成果物を作り上げる事でチームワークを体験する最良の機会となります。
最新技術に触れられることも大きなメリットになります。
ハッカソンによっては最新技術を中心としたイベントも増えています。
たとえば、AI(人工知能)やフィンテック、IoT、RPAなどといった、現在多くの注目を集めている分野の専門家からアドバイスを受けながら制作できることは、今後の活躍が期待されるプログラマーにとって大きな財産となります。
ハッカソンはソフトウェアの新規開発や既存プログラムの改善作業を通じ、プログラマーやWebデザイナーのスキルアップや人材育成を図る目的でも実施されています。
◆国内のイベント開催事例の紹介
では、国内で開催されているハッカソンの事例を紹介いたします。
・Hack Day/Hack U(主催:Yahoo! JAPAN)
Yahoo! JAPANは、エンジニアやデザイナーが有する創造力やアイデア、そして、情熱を解き放つ、ということを目的に、「Hack Day」「Hack U」と呼ばれる国内最大級のハッカソンイベントを開催し(※各国のYahoo!でも開催されている)、プロトタイプ(試作品)開発を行い、新たなサービス開発へつなげています。
このハッカソンの特長は、24時間のタイムリミットと、90秒という短いプレゼンタイムです。Hack Day 2016の審査員にはロボット研究者の石黒浩氏も名を連ね、Yahoo! JAPAN社内から300人近くが参加する人気のイベントとなっています。
・デバイスハッカソン(主催:NTTドコモ×NTTドコモ・ベンチャーズ)
NTTドコモ×NTTドコモ・ベンチャーズは、ハッカソンキャラバンとして、各地でハッカソンの開催を進めています。
2014年に大阪で開催された「デバイスハッカソンin大阪」では、ゼンリンデータコム:いつもNAVIのAPI(限定提供APIあり)や、日本経済新聞:日経電子版の記事などのAPI(ハッカソン限定提供)など、13社からデバイスやAPIが提供され、34名の参加者がアイデアソン→チームビルド→ハッキングを行いました。※「アイデアソン(Ideathon)」とは、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語で、ある特定のテーマについて多様性のあるメンバーが集まり、対話を通じて、新たなアイデア創出やアクションプラン、ビジネスモデルの構築などを短期間で行うイベントのこと。
子どもたちの理解度や集中度を、顔認識機能などを活用してモニタリングする“ここみる”、HMDを通じ、ココロボ上にAR技術によりキャラクターが表示され、表情に反応して単純な音声を出力できるツール“My Girl”といったサービスプロトタイプが開発されました。
・ソニー「GO FOR IT~Home Hacker’s Workshop~」
ソニー株式会社、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社および株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所は、「GO FOR IT ~Home Hacker’s Workshop~」と題したハッカソンを2日間に渡り開催しました。
参加者は、「環境にやさしく、安心・安全で楽しいライフスタイルの実現」をテーマとして、複数のデバイスを駆使したアプリケーション・サービスを開発しました。
・東京大学「JPHACKS(ジャパンハックス)」
JPHACKS(ジャパンハックス)は、イノベーターの発掘を目標として2014年からはじまり、全国6拠点で開催をされている、東京大学が主催する日本最大級の学生向けハッカソンです。
第1回は100人を超える学生が参加し、第2回の2015年度は全国5都市で200人を超える学生が参加しました。
2日間のHack Day(ハックデイ)でのチーム開発と、そこから選ばれたファイナリスト達が東京に集い、Awardを賭けたプレゼンをおこなうAward Dayで構成されており、Award DayではJPHACKS Innovator認定の授与や、様々なAwardを用意。
各会場の優秀チームと全参加チームの中からオンライン審査で選ばれたチームは決勝大会に進み、プレゼンテーションとブース展示を行いました。
◆ハッカソンイベント参加方法
ハッカソンイベントの内容・開催場所・開催日時の確認方法としては、ITイベントサイトをのぞくのがよいでしょう。
ものによっては小学生からお年寄りまで、いろいろな人が参加しているので、自分のレベル感にあったものを選ぶといいでしょう。首都圏をはじめとした大都市で開催されるケースが多いとはいえ、毎週末のようにハッカソンは開催されています。
◆まとめ
今回はハッカソンについてまとめました。
短期間集中してプログラミングに取り組むハッカソンは、自分の幅を広げる絶好の機会です。
他のメンバーから刺激を受けたり、新たな発見をしたりすることができます。
「プロダクトを作りきる」「賞を獲る」「会場で新しく出会える人たちとの制作を楽しむ」など、楽しみ方は人それぞれですので、構えず気軽に参加してみてください。